|
ミャンマーでは軍事クーデターにより民主体制が奪われて一年が経ち、解放されたウクライナのキーウ州では市民の死体が転がっている。我が極東の斜陽国家、地方都市の薄暗いバーでは可憐に着飾った中年女が地獄級にセンスの悪い中年男へ、「銀座でキャビアが食べたい」という不可解な要求を突きつけ、外国産の発泡性ワインを大事そうに傾ける。シックな内装のワインバーでは美味い料理が出たし、店を切り盛りする女性には非常な魅力があったが、店内BGMのボサノヴァジャズは円筒形の黄色いJBLから出力されていて、それはとても醜かった。この世界で何か守らなければならないものがあるとは到底思えなかった。幼い子どもの精神的平安や幸せな老後を迎える我々の権利、およそ軍政や独裁よりも正しいと思われる政治体制や、銀座SIXのキャビア。全て等しくどうでも良いのだ思う時がある。何かこの世界に重みというものがあるなら、教えてほしい。小さいときの記憶、テレビや街の広告から覗く世界はいつも最悪だった。世界はこんなことで構成されていないと、「あなたは大丈夫だ」っていつも言ってほしかった。素晴らしく清潔で、論理的な殺人が支配して久しいこの世界で今なお、美しい物や事、信仰に値するだけの論理や、変わらなく存在する何かが一つでもあるならば、私に教えてほしい。→fooliganvoice@gmail.com |