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Description:
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大湊でバスを降りた。降りる予定ではなかった。だが車窓から見える灰色の樹木たちを見ていると、叔父を思い出すのだ。海上自衛隊としてこの地を愛し、ここで死んだ叔父。除隊して東京に戻るのかと思っていたのに、よほどこの地を離れたくなかったのだろう。なかでも彼が好きだったのが、大湊ネブタ祭り。4年前の祭りに参加した時の写真を叔父は僕に送ってくれていた。子供の頃は厳格な叔父があまり好きではなく、たまに来る手紙も適当に読んでいた。だがその写真だけは、僕の心をひきつけた。平家物語からの場面。「宇治川の先陣争い」。雄々しい武将たちが刀をふりかざし互いににらみ合うダイナミックな構図。夜の闇に怪しく光り、いっそう迫力を増すねぶた。『強くあろうと意地を張ってきたように思いますが、この土地の自然と人は、そんなちっぽけな自尊心などとは比べ物にならないほど、大きく深い』。その時の叔父の手紙の一文。結局それが僕への最後の手紙だった。もっと話しておけばよかった。…何度思っただろう。冬には雪で真っ白に染まる港の町を僕はゆっくりと歩く。実際の祭りを見てみたい。そして、叔父と語り合いたい。潮風が吹いている。厳しく、そして優しい叔父の生き方を少しだけ、僕に教えてくれた気がした。 |